一番の親孝行

「凄絶な告別式だったよ」と長男。
「伯母ちゃん、見てられなかったよ」と長女。
「あのどっしり構えた伯父ちゃんも、相当参ってたよ」と次女。

二週間前、子ども達にとっては実の兄のような存在の父方の従兄が急死しました。
急性心筋梗塞で突然倒れ、まだ35歳でした。
独身で、両親にとっては一粒種でした。
兄弟がいない分、うちの子ども達ととても仲が良く、特に長男と次女とは共通の趣味が多いため、実の兄弟以上にメールをしたり遊びに行ったりしていました。

私は縁が切れているので、お通夜に参列しただけでしたが、子ども達は知らせを受けた翌日から怒涛の一週間を過ごしました。
お世話になったお兄ちゃんに恩返しできない分、伯父ちゃんと伯母ちゃんに精一杯恩返しするしかないのですから。

最初に知らせを受けた長女はかなり動揺して電話してきました。弟と妹に連絡が取れないと焦って、何を言っているかわからない状態でした。
次女は、一週間前に二日続けて会ったばかりで、今月26日の誕生祝いを早目にもらっていました。
長男も今月25日が誕生日で、一緒に祝ってくれるはずが予定が合わないため、別の日に会う予定でした。
長女は、一週間後に、7月に入籍した報告をしに行く予定でした。

うちの子ども達は、私の父と母と、実家の本屋を手伝っていたおじさん(母の従兄で第二の祖父のような存在)と、三回の葬儀を体験しています。
そのため、二十代のわりに告別の様々な儀式や法事などの経験は豊富です。
とはいえ、徹夜でお線香の番をしたり、遺族を慰めるために一晩中話を聞いたり、と今まで親達大人がやっていたことを実際にやるのは初めてです。
地元に親戚がたくさんいる中でも、うちの子ども達ほど親しかった人はいなかったようなので、本当に実の兄弟のように見送ってあげたようです。

長男は死に対してドライなので「お兄ちゃんは好きなように生きていたんだから、悔いはないはず」と言っています。
次女は、「おじちゃんの次に最後にメールもらってたのに、返事してなかった」と後悔していました。散々面倒をかけているので「そのうち倍にして返してもらうからな」と言われて別れたそうです。そのため、初七日が終わるまで、買い物や荷物持ちや料理や犬の散歩など、いろいろ手伝ったようです。
長女は一番頼りなく、風邪で咳がひどかったため、かえって心配してもらう始末。つらい時に慰めてくれる人が家にいてくれて良かった、と婿に感謝しました。

長男と次女は、これからしばらくは、毎週のように遺品整理と伯父・伯母の様子を見るために通うと言っています。
長男と次女にとっては宝箱のようなお兄ちゃんの部屋を、両親は早く片付けたいそうです。
しばらくそのままにしておけば良いのに、とみんなから言われるそうですが、早く今の状態を断ち切りたいようです。
うちの子ども達は、初七日が終わった夜からバイトを再開し、予定通り様々な遊びや付き合いをこなしています。
世間的にはドライ過ぎるかもしれないけれど、お兄ちゃんの分まで精一杯人生を楽しんでほしいと思います。

大震災などがあると、人間いつ何があるかわからないから、いつ、どんな別れがきても後悔しないように生きたいと思います。
子ども達にも、親の価値観を押し付けずに好きなことをさせつつ、親がいついなくなっても大丈夫な生活力をつけさせたい、と思います。
ですから、お互い何があっても後悔はしないという暗黙の了解が家族間ではあります。
けれど、順番だけは守ってもらわないと。

子どもは、どんなに出来が悪くて、まともに就職できなくて、何やってるかわからないような生活をしていても構いません。
親の虚栄心や自分の見栄のために生きることはありません。
できれば好きなことに夢中になって、楽しく生きて欲しいとは思います。
どんな生き方をしても構わないけど、とにかく親より長生きさえしてくれれば文句はありません。