永遠の0

『永遠の0』は、26歳のニートの弟とライターの姉が、終戦間際に特攻隊員として26歳で亡くなった実の祖父のことを調べるというお話です。
祖父を知る生き証人を探しあて、体験を聞いて回りますが、飛行機による特攻だけでなく、人間魚雷や人間爆弾など様々な特攻の話がリアルに描かれています。
小説としても、伏線が最後に活かされていて、感動させられます。

私の父は、特攻隊の生き残りでした。
特攻隊と聞くと、私が生まれる半年前に亡くなった、会ったこともない父方の祖母のことを思い、胸が熱くなります。

父は、16歳の時にお母さんのことを守りたい一心で予科練に志願しました。
「お母さんは偉かった。予科練に志願したいと言ったら、黙って見送ってくれた」とよく父は言っていました。
それを聞くとムカついて「言いたくても言えない時代だったんだろ。子どもの命で自分を守ってほしいと思う母親なんているもんか!」と怒鳴っていました。

祖母は、父の最初の子どもが生まれることを楽しみにしながら亡くなりました。
自分を守ろうとした9人兄弟の末っ子が無事に戻ってくれて、次の世代に命を繋げてくれたことは、どんなに嬉しかったことか。

戦争映画で特攻隊員が「天皇陛下万歳!」と叫んで突っ込んでいく場面を見て、父はいつも言っていました。
「天皇陛下万歳!なんて叫んだ奴がいるわけない!みんな、お母さんって叫んだに決まってる!」

『永遠の0』には、残された手紙などの資料を元に、特攻は天皇を信仰した信者による自爆テロだ、と信じている若者が出てきます。
あんな検閲による嘘だらけの手紙を信じるのか?という気がしますが、そんな説を聞かされると信じる人も多いのかもしれない、とも思えました。

特攻は、作戦でも何でもなく、味方による虐殺だ、と思います。
死ぬことが潔い、なんて根強い日本人の死生観によって、大量の優秀な人材が失われました。無限の樹形図を大量に断ち切られたことになります。
その作戦を実施した権力者達は、多くが子孫を残し、中には政治の実権を握っている人もいます。

父には、軍隊式に殴られたり乱暴に育てられましたが(お母さんの生まれ変わりかもしれないのに!)おかげで強くたくましく育ちました。
どんなに強い権力者(子どもにとっては親や教師)に対しても、自分が正しいと思ったことはたった一人でも主張できる子になりました。
そのために損をしようがいじめられようが、まったく気にしません。
何故なら、父のように志願する子どもがいたら、社会に逆らってでも殴り飛ばしても止める必要があるからです。

父は、「好きなことを職業にしたらいいぞ」ともよく言っていました。
自分や仲間たちができなかったことを、好きなようにやらせたい、という思いがあったのでしょう。
おかげで、好きなもののために好きなように生きる人間になってしまいました。
子どもたちも、優秀なエリートとは程遠いけれど、好きなものを存分に楽しむ人間に育っています。

息子は「悪いけど、一人しか生きられないとなったら、自分が助かるから」と、世の中に自分一人残っても、何がなんでも生き残る、と言い放っています。
誰が子どもに助けてもらうもんか。自分の身は自分で守るから心配するな、とこちらも言っています。

絶対に死地に向かう心配のない人達の中には、戦争のリベンジをしたがっている人もいるようです。
日本人は一般的に良い人達ですが、簡単に洗脳されやすく、多数意見に流され、自分の味方を虐殺する人間にも変身する可能性を秘めています。
同じ過ちを繰り返さないためにはどうすべきか?
まず、過去を知ることが必要でしょう。

『永遠の0』は、うちの子ども達と甥っ子それぞれに一冊ずつ配りました。
さらに、読ませたい友達がいたら、手渡してほしいと思っています。