「雪と珊瑚と」

この本は、「平均的な幸福」に縁のない人、「平均的な幸福」に縛られて悩んでいる人、そして、自分が平均以上の幸福の中にいても気づかない人にぜひ読んでほしい本です。

 

21歳の珊瑚は、離婚して、生後7ヶ月の娘・雪を抱えながら生活を模索していました。
高校の時にシングルマザーである母親に捨てられ、元夫の実家には結婚・出産・離婚のことさえ隠され、天涯孤独の身でした。

それでも、自分の境遇を淡々と受け止め、どう対処すれば良いか考え、できるだけ他人に頼らず自分で何とか生きてきました。
そんな姿に共感し、さりげなく手を差し伸べる人々が出てきます。そのほとんどの人が「平均的」な人生ではない、それぞれの事情や信念や夢に従って自分で選んだ生き方をしています。
こだわりを持って無農薬野菜を作る人や、その素材を活かして手間をかけずにおいしい料理を作ってくれた人達から、食べる物がまったくない家に一人残されて育った珊瑚は、多くのことを教わります。

「どんな絶望的な状況からでも、人には潜在的に復興しようと立ち上がる力がある。・・・・・それを、現実的な足場から確実なものにしていくのは温かい飲み物と食べ物」

 

高度経済成長以前の日本には、質素な生活の中で淡々と暮らし、子どもが生まれたら一人親でも可能な範囲で育て、現代の「平均的な幸福」からはほど遠い人生でも不幸だとは思わずに暮らしていた珊瑚のような人がたくさんいたと思います。
塾や習い事にお金をかけ、ブランド物を身に付けさせ、学歴をつけさせて、できるだけ安定した企業や公務員を目指すことが教育の見本のようになったのは最近のことです。
その中で、ちょっと異質だといじめられ、学歴があってもなくても就職難、やっと就職できても勤め先でいじめられる、というのが子どもたちの現状です。「平均的な幸福」を目指しつつ、絶望的な状況です。

 

そんな子どもたちには、いろんな生き方があることを教えてくれます。自分のやりたいことを見つけたら、実現すれば良いのです。
自分で事業を起こす為の具体的な対策も教えてくれます。成功例と失敗例などもあり、小説スタイルのビジネス書?とも思えました。
起業すれば誰もがトントン拍子に成功して、雑誌の取材を受けて注目を浴びる、というのは幻想ですが、誰にでも自分の夢を実現する方法があるのは事実です。

 

親は、良くも悪くも子どもに影響を残します。
ネグレクトという虐待家庭で育ったことが、美味しいものを提供したいという珊瑚の原動力になり、その潔い生き方は母親譲りでした。
そして、娘を育てることで生きる力をもらい、母親とは違って娘の成長を喜ぶことができることが、珊瑚の「幸せ」でした。