オーケストラ!

「オーケストラ!」という映画を見ました。
旧ソ連時代のユダヤ人排斥で解雇された楽団員が、劇場の清掃員となっていた指揮者を中心に30年ぶりに集められ、正式な楽団に成り代わってパリの劇場で演奏するという、喜劇、悲劇、社会問題を含んだ音楽映画です。

様々な職業に就く楽団員達が奏でる民族音楽やいろいろな演奏とクラシックの音の切り替わりも楽しいのですが、中心となるのがチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲です。
30年ぶりでろくにリハーサルもしないで本番を迎え、優秀だったはずの楽団員の出だしはボロボロです。
それが、指揮者が指名し、固執し、過去の謎を秘めた天才ヴァイオリニストがすばらしい音を奏でると、それに合わせて楽団員の演奏も変わっていき、曲の盛り上がりに合わせて過去の様々ないきさつも明かされていきます。

昔、実家が本屋で、子どもの頃世界名曲全集のレコードを親からもらいました。
その中で一番好きだったのがチャイコフスキーのピアノ協奏曲とヴァイオリン協奏曲の入った一枚でした。
勉強するから、と店や家の手伝いをサボってはレコードを聞いてましたが、クラシックの中では一番聞いてたのがチャイコフスキーでした。

考えてみれば、あの時代のあまり生活レベルの高くない家庭にあって、本だけでなく、クラシックや映画音楽のレコード、美術全集など、様々な芸術に触れる機会を与えられていたのは、なんて贅沢だったんだろうと思います。
長女だからと、店の手伝いも家の手伝いもやらされたうえに怒られてばかりで、早く大人になって自由になることだけを願ってた子ども時代でした。
それでも、勉強してるフリさえしてれば音楽は聴き放題でした。父に言えば、本来は高い売り物のレコード全集をいくらでももらえました。

両親はせっかく本屋をやっていながら、まったく商売熱心ではなく、惰性で店をやっていたとしか思えません。発注から店内の掃除や本の陳列など、あらゆることに無関心で、手伝っていて歯がゆくて仕方ありませんでした。
何故、商売やるならもっと工夫して熱心に取り組むとか、商売が嫌なら好きな仕事を見つけないのだろう、とずっと疑問に思ってきました。

今思うと、本屋は子どもの教育のためだったのかもしれません。
当時の収入レベルで本屋でなければ、読める本にも限りがあり、百科事典や音楽全集を買ってもらえるとはとても思えません。
自分たちは商売には向いてないけど、本屋だったら子ども達に教育上良い環境を作ってやれる、と思ったのかもしれません。

百科事典をたくさん売った報奨品のステレオを得意気に見せ、自分の好きな西部劇の映画音楽を聞かせてた父の姿を思い出しました。音楽の成績に多少のコンプレックスを持っていた親のおかげで、クラシックから映画音楽、さらにジャズやロックまでいろいろな音楽に興味を持て、いろいろな映画を見るようになり、好きな世界が広がって楽しい人生にしてもらったな、と今更ながら思いました。