鈍感力

今年の流行語大賞のトップ10にも入った渡辺淳一の『鈍感力』。
繊細できめ細やかな神経が尊重される日本では、図太く打たれ強い鈍感な人間は肩身が狭いのですが、鈍感な方が、どんな世界でも何をするのでも良い結果をもたらすという、鈍感な人間には嬉しい本です。

子育てだって、鈍感な方が楽で楽しくやれると思いませんか?
優秀な子どもが親の期待通りに育つなんて、そうそうありません。
きちんと早寝早起きの習慣をつけて、賢くなる食事に気をつけて、様々な能力を伸ばせる住環境を整え、ふんだんに教育費をかけられる経済力を持ち、最大限の努力で子どもの世話をして、優秀な子に育てていらっしゃる方もいるでしょう。
でも、どこの親もみんな同じようにできるわけもなく、する必要もないでしょう。
よその家庭を気にしたり、他の子どもと比較したり、成長に一喜一憂しても仕方ありません。
子どもの逞しい鈍感力を引き出し、親も神経質にならずに気楽につき合っていきたいものです。

親は、自分自身が好きな道を進み、やりたいことをして、楽しく生きている姿を見せることが一番の教育でしょう。
子どもにも、いろんなことをさせ、好きなことを見つけて夢中になれる環境を整え、自分の能力を伸ばし、活かす方法を身につけさせることです。
そのためには、テレビも映画もゲームもマンガも遊びも、年齢によってある程度親が管理しながら、やりたいことをやらせても良いのではないでしょうか?
親の趣味や好みでダメと決めつけたり、子どもがやりたくもないものをやらせたり、親の思い通りに育てようとしても、そううまくいくとは思えません。

先日、甥と次女と三人で本屋さんに行きました。
「誕生日のプレゼントを買ってあげるから、何でも好きな物を選んでいいよ」と言っても、甥はなかなか欲しい物を言いません。(うちの子ども達ならここぞとばかりに、親には絶対に買ってもらえない物を選ぶでしょう)
一緒にいた次女が
「これが欲しいんじゃない?」
と手に取ったのは、マイクで駅員さんのマネができる、いろんな音の出る電車の絵本です。
何度もその本の前をウロウロし、手に取り、滞留時間が長いので、きっとその本だろうと思ったそうです。
「どうせお母さんいないんだし、何でも選んでいいんだよ」と言っても、
「でも、お母さんがダメって言うし・・・」
確かに、まだ小一とはいえ、あまりに幼い選択ですし、多分似たような本も持ってるでしょうから、怒られそうです。でも、甥は電車が大好きで、似た本でも同じでなければ欲しくなるのもわかります。
「それじゃあ、お勉強もできる物と一緒に買ってあげる。それなら大丈夫だよ」
と言って、日本地図のパズルゲームを組み合わせてプレゼントしました。
甥はニコニコ顔でした。

教育的指導も良いけれど、ほどほどにしないと、大人の顔色をうかがう神経質な子どもに育ってしまいます。
親に時間的、経済的余裕があると、子どもの教育に熱が入り過ぎ、いろいろな習い事をさせたり塾に通わせたり、子どもの意思とは関係なく子どもの時間を奪ってしまうこともあります。
それでも、小さい子どもほど文句を言いませんし、親の期待に応えようとします。
親が好きなことを好きと言ってみたり、親を喜ばせようと一生懸命です。
でも、そういう子どもの気遣いには敏感でありたいものです。子どもの鈍感力をどんどん失わせてしまうからです。
親は、全精力を子どもにかけるなんて有り難迷惑なことをやめ、もっと鈍感に大らかに、子どもと一緒の時間を楽しんだらどうでしょう。

「これから全世界に羽ばたき、新しい時代を切り拓いていこうと思う人は、まず自らの鈍感力を確かめ、あると思う人はそれを大切に、ないと思う人はそれを養うよう、さまざまな環境にとび込み、鍛えるべきです。
そしてそのためには、なにごとにも神経質にならず、いい意味で、すべてに鈍感で、なにごとにも好奇心を抱いて向かっていくことです」(『鈍感力』より)