天知る、地知る、子知る、我知る

教室で使用するテキストは、ほとんど解答がはずしてあります。
時々、ズルして答えを丸写しする子がいるので、その予防策です。
それでも、はずせない解答があったり、テスト練習用のテキストは、家でも練習できるように解答がついています。
一対一でずっと見ているわけでもなく、基本の指導が終われば自主的に練習する時間が多いので、つい解答を見てしまう生徒も出てしまいます。
そろばんでは、最終的にテストに合格しなければ先に進めないので、ズルをして全部丸をもらってたくさん進んでも意味はなく、後で苦労するだけなのですが、何故か、かなり出来の良い生徒に、そういう過ちを犯す子が出ます。

不自然に早かったり、異常に間違いが少なかったりするので、何となくわかるのですが、それとなく注意するだけで、あまりきつくは叱りません。
それは、確実に後から、自分でできないことを思い知り、後悔するに決まっているからです。
ズルをして自分でやらずに、わからないことをそのままに進めば、その何倍もしっぺ返しがきます。
あ〜あ、こんなにやっちゃって、と内心思っても、本人が気づくまで放っておきます。
どうせ、自分でもう一度やり直し、覚え直すしかないのですから。そのときは、何度も指導し直すことになるので大変なのですが、二度と同じことを繰り返さないように、とことんつき合うしかありません。

中国の故事に「天知る、地知る、子(し)知る、我知る」という言葉があります。
後漢時代の、とても博学で清廉潔白なことで有名な政治家の楊震(ようしん)の言葉です。
「誰にもわからないから大丈夫ですよ」
と賄賂を渡そうとする人に、楊震は、
「天が知っている、地が知っている、あなたも知っているし、何より私が知っていますから」
と言って断ります。

誰にもわからないから、どうせバレやしないから、などと嘘をついたり、悪いことをする人は、自分が悪いことをしたという自覚がないのが一番の問題だと思います。
一度悪いことをしたら信頼をなくし、その信頼を回復するには、相当の時間と努力が必要です。
勉強でも、ズルをしたら、その部分を取り戻すのに、真面目にやる時間の何倍もかかります。
でも、子どもはいろんな事をしながら成長するものですから、悪い事をしても、それを自覚し学習してくれれば、大人になったとき、的確な判断力がつくはずです。
みんなやってるからいいじゃないかとか、誰も見てないからいいじゃないかなど、他人に依存した判断でなく、自分が自分の行動を正しいと思うかどうかが重要です。
自分が間違ったことをしたら、落ち着かない嫌な感じを自覚して、他人が悪いことをしてたら、間違ってると主張できる強さを身につけてくれたらいいなあ、と思います。