転がる石にはコケはつかない

ローリング・ストーンズのコンサートに行って来ました。
最初の来日コンサートのときは、お腹の中に次女がいました。
前回三年前の来日から、長女と弟夫婦と妹の五人で行くようになりました。
長女は、まだハイハイもしない赤ちゃんの頃から、ストーンズの曲をかけていると、嬉しそうに手足をバタバタさせて踊っていたほどのファンです。

63歳のミックは、スリムなスタイルと変わらない声を保ち、外野のポールからポールの距離を、歌って踊りながら走り抜けてました。
同い年のキースも、いたずらっぽい不良少年のような表情で、嬉しそうにギターを弾きまくってました。
65歳のチャーリーは、まだドラムできるのかなあ?と心配でした。でも、もともと激しい叩き方はしませんが、真面目に正確にリズムをきざんでて、元気でした。
その中で、ギターのロンは一番若くて、59歳。
こんな年になっても、相変わらずの元気さで、期待通りの演奏を見せてくれるだけで、嬉しくて涙が出そうになります。

1963年にデビューしてから、ずっと第一線の現役で活躍してきた人達です。
20代、30代のときに作った財産(作品)だけでも、充分に悠々自適の最高級の生活ができるはずです。
お金が目的だけの人間なら、還暦を過ぎた年になってまで、好きなお酒やタバコを控えたり、毎日走って体型と体力を保持したり、楽器の練習を続けたり、という努力なんかしないでしょう。
一世を風靡したミュージシャンでも、贅沢と不摂生のためか、40代で声の伸びがなくなったり高音が出なくなって、あのきれいな声はどこへ行っちゃったの?とがっかりさせられる人達がたくさんいます。
でもストーンズは、音楽が大好きで、自分たちの作品が大好きで、ファンを楽しませることで自分たちも楽しんでいます。
だから、いくつになっても、舞台に立つための努力を惜しまず、世界中のファンの期待に応え続けてくれるのだと思います。

多くのミュージシャンは、過去の栄光にすがりたくなくて、新曲中心のライブをしたり、過去のヒット曲を封印したりします。せっかく見に行っても、聞きたかった曲を聴けなくてがっかりさせられたりします。
でもストーンズは、みんなが絶対聴きたい曲ははずさず、できればやってほしいな、という曲を日によって織り交ぜてくれます。
結局は、全盛期のヒット曲が中心のラインナップになってしまい、せっかくの新譜発表の場なのに、本人達にとっては残念じゃないかな、と心配になります。
でも、見に来てくれる人が楽しんでくれること、を最優先している気がします。

ストーンズは、ビートルズと同時期に一世を風靡しました。
今では教科書にも載っている優等生的なビートルズとは、いろんな面で違っています。
ビートルズは、デビュー当時は大人達の反感を買っていましたが、次第に一般に受け入れられてきました。
でもストーンズは、教科書になんか載らないだろうし、排他的な人達に受け入れられることはないでしょう。
まだ黒人差別の激しかった時代に、黒人ミュージシャンを敬愛し、リズム&ブルースをベースにしたロック音楽を作ってきました。ですから、黒人の人達からも認められている数少ない白人ミュージシャンです。
マッシュルームカットで、お揃いの制服を着て演奏していたビートルズとは違って、メンバーがそれぞれ好き勝手な格好で舞台に出ています。
派手な服を取っ替え引っ替え着替えるミック。60年代のヒッピー風のままのキース。普段着のTシャツみたいなロン。チャーリーなんて、地味なポロシャツのそこらのおじさんです。
不本意なことを強制されず、それぞれの個性を認め合ってきたからこそ、多少のメンバー交代はあっても、43年もの長い間、喧嘩別れもせずに続いてきたのでしょう。

どんな批判にも負けず転がり続けることは、容易なことではありません。
過去の作品を上回る曲を作ることは難しく、同じ曲を何十年も高いテンションで演奏することも難しいことでしょう。
それでも彼らは、作りたい曲を作り続け演奏し、ファンを喜ばせるために、過去の曲も毎回アイデアを絞って演出しながら見せてくれます。
転がる石には、コケがつかないどころか、磨きがかかってどんどんツヤが出てきています。

無計画な生き方で、やることは鈍く、チャンスはつかめず、そんなことだからダメなんだ、将来どうするつもりだ、などと批判を浴びせられることも多々ありますし、自分でも多少の不安を感じることもありますが、転がり続けるっきゃないですね。
じっとしていると、他人のことばかり気になって、アラ探ししたり、批判的になったり、説教臭いことを言いたくなります。
転がり続ける人は、自分が転がることに夢中ですから、他人のことは気にならないし、楽しいことや面白いことも見つかります。楽しいことや面白いことが見つかったら、周りにも楽しい思いを伝えられます。
いつか、どこかにぶつかって大破するまで、デコボコ道に負けず、まわりのいろんな風景を楽しみながら転がり続けたいなあ、と思ってます。