異人たちとの夏

“自分が自分を大切に思わないでどうする!”

郷愁に満ちた親子関係に泣ける映画です。

次女が、お正月におばあちゃんと叔父ちゃんと歌舞伎を見に行って、帰りに浅草の「今半」ですき焼きを食べた、という話を最近になってしました。
「今半」といえば、「異人たちとの夏」という映画を見なきゃ!
というわけで、昔録画した200本余りの我が家のビデオライブラリーの中から見つけ出して、二人で見ました。(長女は、前に見たことあると言ってました)

主役は、ある程度仕事には成功してるが、離婚したばかりの脚本家(風間杜夫)。
仕事の取材中に立ち寄った浅草で、12歳の時に死に別れた両親に出会います。
まず、郷愁に満ちた音楽と共に、寄席で父親(片岡鶴太郎)に出会うシーンがいい。鶴太郎がすごく良い味の父親をやってて印象的です。
その父親が、母親(秋吉久美子)の待つ、昔ながらの質素なアパートに連れていきます。
脚本家が住んでいる広々としたマンションとは大違いの、お風呂もない1Kの部屋で、明るい両親に歓待されて、今まで突っ張って頑なに生きてきた脚本家が変わっていきます。
腕は良いけど仕事が長続きしない鮨職人の父親だから、生活は貧しかっただろうけど、12歳までは、こんなにとてつもなく明るい両親に育てられ、楽しかっただろうと想像できます。
それが突然両親が亡くなり、おばあさんやおじさんたちにちゃんと育ててもらったとはいえ、それまでとのギャップは大きく、無理して取り繕い、気を遣いながら、気むずかしい大人に育ってしまったようです。

両親に悪気はなかったけれど、異世界の人間に会い続けることは脚本家を消耗させ、一気に老化していることがわかり、両親と別れることにします。
12歳のとき最後に両親と行った「今半」でご馳走するよ、ということで、異世界のテリトリーからははずれているので、長くは存在できないお店に、両親は行くことにします。
両親は、12歳までしか育ててやれないで、大事なことを何も教えてやれなかったのに、りっぱに育って嬉しいよ、と繰り返します。
脚本家は、自分はお父さんみたいに良い父親になれなかったし、良い夫にもなれなかったし、ダメな人間なんだと言います。
すると父親が
「自分が自分を大切に思わないでどうするんだ!」
と言い、母親も
「そうだよ。私たちはおまえを誇りに思っているよ」
と言いながら消えていきます。
せっかく煮えたすき焼きを食べる間もありませんでした。

リストカットや援助交際や、自分を粗末にしている子どもがたくさんいますが、親は生きている限り、「自分で自分を大切にしなさい」ということと「親は子どもを大切に思っているし、誇りに思っているよ」と言い続けてあげたいですね。
大人になってからだって、いろんなつらいことがあって、自分はダメ人間ではとか、誰からも好かれないのではとか、絶望的な気分になることもあるでしょう。
でも、誰がなんと罵倒しようが、自分だけは自分を大切に思いたいですよね。

 

勉強そっちのけで映画を見させたりして親失格なのですが、親子でボロボロ泣きながら感動を共有するのも大切ではないかな、と思ってます。
映画に限らず、テレビドラマ、アニメ、コミック、小説と何でも、これ良かったよ〜と教え合ったり、一緒に見て感動したりできるのも、子どもが自立して巣立つまでのことです。
子ども時代にしか楽しめないものもたくさんあるので、親子で大いに楽しみたいですね。